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その後、ほりの深い顔立ちの神様 洋一郎を食卓まで招き入れ、談笑しながらマユリが大好物のカレーを食べた。マユリはすっかりいつもののマユリに戻っており、
「神様ー!サラダとってー」とか、「神様ー!ジュース入れてー」
などを言って、神様 洋一郎とすっかり仲良しになっていた。マユリが神様 洋一郎を呼び、何かを頼むたびに“一生のお願い”に聞こえてきて、それも何度も言うものだから、俺もずっと笑顔でいられた。
「もー。マユリ!洋一郎さんをそんなに使っちゃいけません!それに、洋一郎さんの名字を呼び捨てにしてもダメよ!」
(あ、そうか)
神様が名字だから、神様ー!は呼び捨てなんだ。
「えー。じゃなんて呼んだらいいのー?よういちろう?」
「だからそれも呼び捨てでしょうが!」
「あはは。いーよいーよ。僕も呼び捨てにされるの慣れてるし。そのままでいいよマユリちゃん」
「わーい!ありがとう神様ー!」
ありがとうの後に神様を付け足すだけで、奇跡を起こし、まるで人の命を助けたレベルの感謝に聞こえてくる。
晩ごはんを食べ終わった後、神様 洋一郎が手土産で持参した焼き菓子を、俺とマユリと神様 洋一郎の3人でいただく。母さんは台所で食べ終わった食器を洗っている。マユリの質問攻めが始まる。
「神様は何歳なの?」
「えーと、今年で51歳だよ」
(俺の勘はハズレたが、神様にしては若いなと思ってしまう)
「神様はどこに住んでるの?」
「ここから歩いて10分くらいのところだよ」
(天空の城じゃないんだ…)
「神様はなんのお仕事をしているの?」
「工場だよ。車の部品を作ってるんだよ」
(人を救ったり大規模災害を食い止めたりしないんだな)
ダメだ。神様という名字は、“あの神様”しか連想できない。だからこの人がどういう人か分かるたびにショボク感じてしまう。でもめちゃくちゃ面白い。
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