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「な、何色にしてもいいんですよね!?」
地に足を付けた湊は、服を着ながら目を輝かせてそう言った。リバティの色を塗り替えてもいいと言っていたのを思い出したのだ。それを聞いた男性が、パソコンを操作しながら片手間に答える。
「いいよ、何色でも」
「じゃあ、白!このままで!」
「え、いいの?」
「だって、正義のヒーローは白だから!」
楓がギョッとした顔をした。そして鋭志は白けた顔をしている。湊の言葉に優しく頷いてくれたのは瑞希だけだった。
自分がこれから乗るであろうリバティは、相棒になるだろう。それだったら、自分の思い立った色にする方がいい。
「名前とかあるんですか?」
「あるよ、一応」
「じゃ、じゃあゴーファイターとか!」
「え」
「え」
「え」
実のところ、精一杯カッコイイ名前を考えていた湊だが。
「え、え?」
皆の反応を見ると、そうでも無い様な雰囲気が。
「べ、別にいいけど、浮くよ?」
「えっ」
男性はパソコンを操作する手を止めて一つ咳払いをした。そして遠くに並ぶ、色とりどりのリバティを見る。湊も同じ様に視線を向けると、迫力のあるリバティに固唾を飲んだ。
「赤いの。鋭志のリバティはブラッド」
「ブラッド?」
「っていう名前」
「へぇ…」
嫌な予感がした。
「銀色の。楓のリバティはレイン」
「………」
「青いの。瑞希のリバティはスカイ」
男性がそう言い終わる頃には、湊は両手で顔を覆っていた。あまりにも恥ずかしくて真っ赤になっているのだ。
「それでもゴーファイターって付ける?」
「つ、付けない!す、スノウでいいです…!」
ジタバタと地団駄を踏む湊を見て、楓は大声で笑った。
「カッコいいじゃん!ゴーファイター!」
「やめて…!やめて…!」
鋭志も言葉を続ける。
「強そう」
「恥ずかしい…!」
やはりそんな中でも唯一優しくしてくれたのが瑞希だった。瑞希は湊の肩をポンポンと叩くと、優しい声で言った。
「男の子だもん、そうなるよね」
あぁ、なんて優しい人だ。そう思ったが顔を上げる事が出来ない。
こうして湊のリバティの色と名前が決まった。
白いスノウ。
雪の様なそれは、きっと血の色に映えるだろう。
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