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episode233 訪問者シラノ
「おまえに鞭打たれながら俺が何を考えていたか分かるか?」
分かるもんか。
返事をする代わりに僕は微かに首を振る。
あの後吊るされたまま
今度はこちらが泣いて許しを請うまで繰り返し犯されて。
僕はすでに思考力など持ち合わせていなかった。
虫の息でベッドに俯せた僕の背中に
地図を書く様に指を這わせながら征司は言う。
「そもそも九条敬は――あの女心理学者とグルだったんじゃないかってことさ」
征司の見解はこうだ。
九条さんは征司を依存症セミナーに連れて行くと決めた時から
件の心理女史に弟への依存を指摘するよう指示していたというのだ。
「あたかも俺がおまえごときに依存して我を失くした情けない男だと信じ込ませようとしたわけだ。だから俺がおまえをセミナーに連れて行くと言い出した時は好都合だと思っただろうな」
息つく間もなく征司は捲し立てる。
「おまえの目の前でこの俺をこき下ろすことが出来るわけだから」
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