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(道理で温かいと思っていたけど)
後ろを向くと、ずっと背中をさすっていたのは尻尾9本のうちの1本だ。
「温かいだろう?私の尻尾はもふもふで気持ちいいと評判なんだ」
「はぁ…」
(一体、どこの評判なんだろう)
自慢げに話す彼女の横眼にあたりを見渡す。和室の一室らしい。
空いた襖から紅葉やイチョウの葉が舞っている竹林のようだ。
「…紅葉?夏だった気がするんですけれども」
「あー、ここは私の住処だよ。ちょっと空間のゆがんだところに建っているからさ」
「空間がゆがむ?…ちなみに僕って、あなたに魂食べられて死んだんじゃないんですか?」
彼女に魂を上げたら苦しみ出して死んだと思っていたのに、今ここで意識を保っている。素朴な疑問を口に出すと、彼女は困ったように笑った。
「えっと…おまえの肉体は死んださ。まずは今の状況を説明しようか」
彼女はまず、彼女自身のことについて話し始めた。
彼女は大昔から、この辺の土地一帯を取り仕切る九尾の狐だそうだ。主に、人間の魂をかたどっている精気を吸って生きているが、人間の食べ物も食べられる。彼女はよく人間の住む街に降りて、少し人間の精気を分けてくれる人を探している。
僕が屋上から飛び降りようとしたときも探しててみつけたらしい。
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