第1章 僕は死んだはずなんですが

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(道理で温かいと思っていたけど) 後ろを向くと、ずっと背中をさすっていたのは尻尾9本のうちの1本だ。 「温かいだろう?私の尻尾はもふもふで気持ちいいと評判なんだ」 「はぁ…」 (一体、どこの評判なんだろう) 自慢げに話す彼女の横眼にあたりを見渡す。和室の一室らしい。 空いた襖から紅葉やイチョウの葉が舞っている竹林のようだ。 「…紅葉?夏だった気がするんですけれども」 「あー、ここは私の住処だよ。ちょっと空間のゆがんだところに建っているからさ」 「空間がゆがむ?…ちなみに僕って、あなたに魂食べられて死んだんじゃないんですか?」 彼女に魂を上げたら苦しみ出して死んだと思っていたのに、今ここで意識を保っている。素朴な疑問を口に出すと、彼女は困ったように笑った。 「えっと…おまえの肉体は死んださ。まずは今の状況を説明しようか」 彼女はまず、彼女自身のことについて話し始めた。 彼女は大昔から、この辺の土地一帯を取り仕切る九尾の狐だそうだ。主に、人間の魂をかたどっている精気を吸って生きているが、人間の食べ物も食べられる。彼女はよく人間の住む街に降りて、少し人間の精気を分けてくれる人を探している。 僕が屋上から飛び降りようとしたときも探しててみつけたらしい。     
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