第1章 僕は死んだはずなんですが

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「めっちゃ小さい魂だなって思ってよくよく見ると、自決しようとしていたからさ。その前に精気分けてくれないかなと思って屋上に降りんだけどさ」 魂の大きさはそのときの人の精神状態が影響していて、特に生きる意志が欠如するとその分魂も小さくなるらしい。 「人間さん、すごく濃厚な魂持っているな!近くにいるだけでも甘いにおいがプンプンする」 とろけそうな笑顔で鼻を近づけられ、どぎまぎする。 「屋上で私の血を飲んだでしょ。私の血でしばらく人間さんの魂と私自身を結びつけたんだ」 「はっ!?」 「だって、もう私のものなんだからいいよね?」 「そうかもしれないんですけど!」 「だから、しばらく私のそばにいて魂を大きくしてね?それで大きくなったときにおいしくいただくの。においだけでも私は楽しめるし!」 (なんて自分勝手なんだ…) ツッコミどころが多すぎてその気力もなくなってしまい、彼女の尻尾に倒れ込んだ。 「強引に私と魂をつなげたから、魂に負担かかったかもね。ゆっくりお休み、人間さん」 「それだけじゃないと思いますが…あと僕、人間さんじゃないので」 「あ、そうか。…じゃあ、私が名前つける」 「え?」 「だって、人間のおまえは死んだんだし、これから魂はそのままだけど新しい生活が始まるんだし!何にしようかなー」 彼女は腕を組み考え始めた。 (そうか。人間の僕は死んだんだ)     
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