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「はははは」
なぜかわからないが笑いがこみ上げてきて、目から涙が流れた。
(死んだことに後悔しているわけではないのに、なぜ涙が流れるのだろうか)
「大丈夫か?…あ、そうだ!じゃあ、君の名前は椿にしよう」
「…椿?」
「うん!名前の中に春って入っているだろう。人間界では春は始まりと終わりの季節だっていうし、これから気に花を咲かせるように魂も大きくなってほしいからな。深くていい名前だろう?な?椿!」
満面の笑みで名前を呼ばれると、心の奥底から温かいものがあふれてくるような気がした。
(もう話が違うとか、死なせてくれとかどうでもよくなってしまった。…最終的にはこの世からいなくなるんだし、彼女とここで不思議な生活をするのもいいのかもしれない)
「椿?」
不思議そうに彼女は首をかしげて僕の顔を見ている。
「はい。よろしくお願いします、茜さん」
満面の笑みで彼女に向ける。
すると、彼女がびっくり目を丸くしたと思ったら、顔を近づけてきた。
「今、すごくいいにおい!ちょっとだけ味見!」
「んっ!」
柔らかいものが唇に当たった。柔らかくみずみずしいそれは僕の唇に吸い付き、体の力が口から抜けていくのを感じた。
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