第1章 新人

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ロマニーヒルは、小高い丘の上に建設された要塞都市だった。 カミヤは鉄道列車から降り、駅を抜けてグランド・コッグのロマニーヒル支部に向かう。 カミヤが配属されたのは、3級の11班。受付の者に連れられ、カミヤは11班のメンバーが集まっているという待機室に案内された。 カミヤが通された部屋には、すでに3人の先客がいた。 一人は、黒髪の、背の高い、穏やかそうな表情をした30歳前後ぐらいの男だ。配給の軍服の襟をくつろげ、上に黒いロングコートを着ている。男はカミヤを見るなり人懐っこそうな笑みを浮かべ、片手を上げる。 「よぉ、“新人”」 その男は、スタスタと近づいてきて、親しげにカミヤの肩に大きく男らしい手を置いた。 「俺はトウゴ。この11班のリーダーだ」 そのトウゴという男は、後ろを振り返り、他の2人を紹介する。 「それで、こいつが副リーダーのサクライ」 「・・・・」 壁際に座っていた、サクライ、と呼ばれた白縁眼鏡のプラチナブロンドの男は、ちらりと目を上げ、カミヤの方を見る。27,8歳程度に見えるその男は、配給の白い軍服をきっちりと着こなし、式典の時などに使用するネクタイまで身につけている。そして、カミヤには興味もなさそうに手元の本に視線を戻し、呟いた。 「サクライだ。以後よろしく」 サクライの冷たい抑揚のない口調に、トウゴは苦笑する。 そして、サクライの向かいで、腕を組んでロッカーにもたれかかっている、濃い茶髪でやや褐色がかった肌の青年を示すと、カミヤを見た。 「あいつはセイシ。立場は君と同じだが、一応あっちが先輩だから。いろいろ聞いて勉強するといい」 そう言われて、カミヤはセイシに視線を向ける。セイシは、カミヤと目を合わせないように、ふっと視線を逸らした。セイシは年の頃22,3歳ほどで、軍服のボタンを留めず、中に青いシャツを着て、あまりきちんとした軍人風には見えない。足元も、既定の軍用ブーツではなく、丈の短い登山靴のようだった。 トウゴはセイシの無愛想な態度に呆れて頭をかく。 「困った奴だな」 トウゴは、大して咎めることもなく、今度はカミヤに視線を戻した。 「・・・じゃあ、カミヤ。さっそく行くか」 「?」 トウゴは、怪訝そうに見つめてくるカミヤを見下ろし、ニッと笑った。 「11班全員で、“任務”にな」
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