エー・アイ

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 マユは結婚しなかった。  三十路の時は、縁があればくらいには、結婚を考えていた。四十路に入れば、無理してまでする必要は、と思うようになった。  老後の心配がないとは言わないが、それでも、手に職を持っていたおかげで定年までは勤め上げることができるだろう。有難いことに、努めている会社は再雇用制度もあり、更に短時間パートに格下げになるにしても、元気である限り、働き続けることができる制度も整っている。  贅沢はできないが、生活に困らない程度には収入もあり、独り身であるから、将来を見据えてそれなりに貯蓄もしてきたつもりだ。  だから、いまさら結婚しようとは思わない。自由気ままに生活してきたのに、それを捨てて、男の面倒を見なければいけないなんてまっぴらごめんだわ、とすら思う。  ただ一つ、マユが危惧することは、完全に「独り」になった時のことだ。  今はまだいい。同じように独身の友達もいるから、適当に食事を楽しんで、適当に旅行に行って、家庭持ちの友達とは違う楽しみ方をしている。  だけど、この先、定年を迎えて、どんどん年を取って、今みたいに出歩くことが無くなったら、自分は本当に独りだ。     
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