エー・アイ

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 日がな一日、誰とも話をすることもなく、何の楽しみもなく、ただ世間と切り離された時間を積み重ねていく。  子どもやパートナーがいれば、そんなに心配することはないだろう。けれど、マユは独りである。社会との接点が切れれば、あっという間に世間から切り離されてしまうのだ。  それだったら、結婚でもすれば? とは誰の談だったか、老後の淋しさのために結婚をするか、自由のために独身を貫くか、これこそ究極の選択ではないだろうか。  どちらにしても雲行きは怪しい。 「一つのマンションを借り上げて、独身友達で集まって住めば、安心だし、自由じゃない?」 とは、いまさら誰かと生活するなんて無理だわ、と豪語するリカの言い分だ。それはなかなかいい案だと、マユ自身も思ったが、所詮は夢物語である。  友達同士の気安さと、独りじゃない安心がある。だけど、今の元気なうちならいいだろうが、年を取ってからだったら、いろいろ問題もあるのでは、と、どうしてもマユは思ってしまう。  それならいっそのこと有料老人ホームとか、介護が必要になった時には介護サービスも引き受けてくれる老人マンションとかを考えるべきである。  もっとも、マユはそれを、まだ先のことを心配し過ぎと言われることが嫌で、誰にも言ったことはないが。     
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