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泣きそうになっているであろう俺の目と陸の視線がばっちりあう。
「コタ?」
俺の名前を呼んでいるのに、まるで違うような声色で陸は言った。
ああ、くそ、くそったれ。
俺はもう陸であれば何でもいいのだ。
まるで獣のような陸も、子犬のように甘えてくる陸も全てが愛しいのだ。
陸は殴っていた相手に興味を完全に失ってしまったようで。
こちらに一歩一歩近づいてくる。
副長先輩が「狂犬モードを一声で止めるなんてまるで飼い主だね。」と言っていたらしいがその時の俺は陸の事でいっぱいいっぱいで気が付く余裕なんて全く無かった。
「コタ、どうして泣きそう?」
陸はすでにいつもの様子に戻っており、俺に聞いてくる。
お前の所為だよなんていう訳にはいかない。
何も言わない俺に陸は何か感違いをしてしまったようだ。
「なあ、誰に泣かされた?
言って?今からそいつ潰しに行くから。」
え?陸は何を言ってるんだ?
「違う。誰にも泣かされてないよ?」
「じゃあ、何で泣きそうな顔してるの?コタは俺のなのに!!
何でだよ!?」
俺の”幼馴染み”なのにと言いたかったんだろう。大事な部分が省略されていて、変な期待を抱きそうになる。
「本当に何でも無いんだよ。」
「コタは俺のでしょ?」
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