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ぎゅうぎゅうと抱き着くとすぐに陸の手も俺の背中に伸びてきた。
どうしたって嫌いにはなれないし、ずっとずっと好きなままなんだけど、それでも怖いものは怖いし、いつか全く知らない陸になってしまうんじゃないかって不安もある。
それから、自分のことも少し怖い。
陸さえいればそれでいいのだ。
いつだって、陸が誰かを殴って居る時真っ先に心配してしまうのは殴られている相手のことではなく陸のことなのだ。
薄情だと思う。
けれども、陸以外まともに頭に入ってこなくなってしまうのだ。
息を吸い込むと陸の匂いがした。
陸も屈むようにして俺の首筋の匂いを嗅いでいるのが、まるで犬みたいで少しおかしかった。
笑うと吐息が漏れて、それに呼応するみたいに陸の唇が落ちてきた。
こうしていると、ホントおっきい犬みたいで人畜無害に見える。
「陸がいつも今みたいならいいのにな。」
漏れた本音を聞いた陸がほにゃりと笑った。
「コタがそう言うならそうするよ。」
陸はそう言うと俺をひょいと抱き上げて、軽やかに階段を上がった。
無理なくせに、俺はその時はまだ、そう思っていた。
了
リクお題:陸のわんこ具合を見たい
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