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あんまり、痛くない話だといいなと思うが、自分から話を切り出す度胸なんて勿論ない。冷や汗をだらだら描きながら二人の次の発言を待っていたときに、乱暴に屋上のドアが開いた。
すごい音がしたのでそちらを向くと、息を切らせた陸がいた。
表情は、かなり固く、俺の近くにいる二人を睨みつけていた。
「いやー、お早い登場で。」
「……コタから離れろ。」
低く冷たい声で陸が言った。
陸は不良グループに入っているということはこの二人は友人じゃなかったのか?そんな疑問がわき、陸と今井先輩達を交互に見た。
「あぁ、陸には佐波君の事拉致ったってメールしといたんだ。」
副長先輩がさも大した事ないという口調で言ってのける。
俺は一瞬ぽかーんと間抜け面を晒してしまった。
と言うことはだ、陸は俺が連れ去られたと思って、ここまで来てくれたって事だろうか。
だとすれば、うれしい。自然とそんな感情が湧きあがってしまう俺は駄目な奴なんだろう。
実際、不良グループのリーダーと一触即発の状況に陸は追い込まれている訳だし。
「あ、あの、陸、ち、違うんだよ。別に、俺、無理矢理連れてこられたとか、そういうんじゃないから、な?」
俺がそう言うと、陸はさらに怒気を強め、普段ではとても考えられないほど、低くそして無機質な声を発した。
「義人先輩、コタの肩に置いている手、どけろよ。」
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