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あまりの状況に気が付かなかったが、俺の肩には副長先輩の手が置かれていた。
「やだなあ、陸君、冗談だよ、じょ・う・だ・ん。」
チェシャ猫のように口元に弧を描きながら副長先輩は笑って、俺から手を離した。
陸が俺のところに駆け寄った。
「コタ大丈夫?何か変な事されなかった?」
ああ、陸はいつもの調子に戻っている。
安心して、息を吐く。
横で副長先輩が「変な事って何だよw」と言っているが、聞こえなかった事にする。
「で、お二人の関係は?」
めげる事を知らない副長先輩が言ってくる。
言ってもいいものかと陸の方を見ると、俺にじゃれつくようにギュッと後ろから抱きしめてきた。
心臓に悪いからやめてほしい。それに目の前には不良さん達がいるんだぞ。
「陸?」
振り返るようにして陸を見ると、いつもの甘えたな顔ではなく睨むような目つきで今井先輩を見ていた。
「ねえ、恋人同士なの?」
副長先輩に聞かれ延髄反射のように答える。
「違います!!お、幼馴染です。」
「ふーん、なにコタ君って無自覚系?」
「無自覚?違うと思いますけど。」
無自覚な訳がない。俺自身陸への恋心は自覚しているからこそ告白して振られているわけだから。
ギュッとこぶしを握ってうつむく。
「義人先輩、コタに何の用があったんだよ?」
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