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狂犬の愛情
「ねえ、ねえ、コタちゃん。」
放課後、帰ろうと思ったところで声をかけられる。
声の主は、副長先輩だ。
嫌な予感しかしないし、できれば気がつかないフリをして帰ってしまいたかった。
けれども、そんなオレの心はお見通しみたいで、首根っこをつかまれてずるずると引きずられるようにして歩く。
先輩は相変わらず、軽薄そうな笑みを浮かべて鼻歌を歌っている。
心臓がドキドキいうけれど、これは、単にこれから起こるであろう、悪い事への不安からだ。
「あの……。」
声をかけるが、華麗に無視をされる。
また、禄でもないことになるに違いない。
できれば、陸を巻き込まない形であればいいと思うけれど、きっとそうはいかないんだろうなと思った。
◆
つれてこられたのは、特別棟の端にある視聴覚室だった。
中に誰かいるのではと思ったが薄暗い室内に人の気配は無かった。
不安で、きょろきょろと周りを見渡すがやはり誰もいない。
「今日は誰もいないよ。」
副長先輩は口角を上げながら言った。
「せっかくだからコタ君と仲良くなろうと思っただけだよ。」
DVDを取り出して教室の前方にあるデッキに入れる。
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