第二章 闇に呑まれる 第二話 屍体もらい

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「その時、主の山田浅右衛門と共にお話を伺うでござる」 「それでは困る。今すぐにお願いしたい」 「今直ぐに……でござるか」 「左様」 「されど、胴をご所望されるのは、なにゆえに?」  すると、男は口を固く閉じて理由を語ろうとはしない。  それから源之助がいくら説得しても、客人の男は頑として退こうとはしなかった。そこで、止むに止まれず男を待たせたまま、主の四代目山田浅右衛門吉寛に相談をすることにした。  今もどんちゃん騒ぎをしている弟子たちと異なり、主の吉寛は自室で既に就寝していた。廊下に膝をつき障子戸を挟んで事の経緯を手短に説明する。  しばらくすると、吉寛の声が返ってきた。 「なる程。屍体もらいか」 「はい。吉寛様、如何いたしましょう?」 「沢木何某、ろくに素性も名乗らぬ客人……どこぞの大名家の家臣か? もしくは旗本?」  いくら屍体を譲るといっても、相手は素性のよく分からない者。山田家としてはそう易々と応じるわけにはいかない。決めかねている吉寛に、源之助は言い加えた。 「吉寛様。礼として『伊勢子建長』なる刀を譲る、と客人は申しております」 「『伊勢子建長』? はて?」 「はい。確かにその様に聞きました。ご存知でございますか?」     
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