15秒。

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15秒。

水面に反射する日ざしが巨大なさかなの鱗みたいに絶え間なく揺れてかたちを変えながら光る。 今からみんな食べられようとしている。 巨大なさかなに。 お揃いの喪服を着て。 なんの味付けもされないまま。 髪は全て納めてある。 名前を書いた白いキャップの中に。 準備体操をする女子の体のひとつひとつを、あたしは巨大なさかなのつもりで品定めする。 Yは不味そう。巨乳だから。 Sは油っこそう。ポテトばっか食ってるし。 Mはまだマシかも。朝晩二回シャワーを浴びるから。 体操を終えてみんながプールサイドに腰掛けて口々に「冷たい」と叫ぶ。 ぼくは、きみの、みかた、ちかった、あの、ひから。 リップシンク。 きゃりーがTwitterで踊ってた振り付けを思い出してる。 あたしたちの15秒。 Tik tokにアップするための永遠の15秒。 Sがこっち見て笑う。踊ってんじゃねーよ見学者。的な。 おけ。 おけじゃねーよ的な。 模倣に次ぐ模倣で作るあたしたちの今。 待ちきれない。 未来が長すぎて。 怖いのと、楽しいのと、知りたいのと、見て欲しいのと、いいねが欲しいのと、フォローしてほしいのと、ブロックと、ブロックと、ブロックと、ぜんぶ。     
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