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 ところが。  ――ぽとっ  再び物音がした。ぱっと背後を見やれば濡れた道と、相変わらず転がっている木の人形。さっきと全く同じ光景だ。  気のせいかと思って、もう一度歩き去ろうと背を向ける。しかしさほど行かないうちに、三度目の物音で足が止まる。こわごわと振り返ると、当たり前だが先程と同じ光景が――  いや、違う。何かがおかしい。  よせばいいのにどうしても気になって、じっとその場から観察してしまった。……そして原因が分かった時、それはもう心の底から後悔した。  雨に濡れて黒々と光るアスファルト。その上に落ちた人形から、長い土の線が伸びていた。自分の進行方向と逆に。まるで、泥だらけの何かが這いずって進んだみたいに。  歩いていて振り返って、『さっきと同じ』光景が見えるわけがない。残った方が、こっちと同じ分だけ進んでこない限りは――  恐ろしい事実に気づいた瞬間、わき目も振らず走り出したのは言うまでもないことだ。
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