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「――まあその後も振り返ったらバッチリ憑いて来てて、家まで連れて帰るのは絶対イヤだからいったん学校まで帰って、頼れそうな先生に泣きついたりとかしたんだけど」
「何でそんなに淡々としてるんですか委員長!?」
「いや、だってもう終わったことだし。ていうかいい加減に委員長呼びはやめてよ」
卒業して何年経つと思ってるの。そういって呆れた顔をしている、本日の語り手である。今は県外で先生をしている彼女、当時からしっかり者でクラスメイトに頼られていたっけ。
……こんなハードな心霊経験持ちとは、正直思ってなかったけども。
そもそも久しぶりに会って、いきなり『何か怖い話ない?』と聞いた私も悪いのだが、そこは物書きの習性だからしょうがない。嫌なことなら口に出さなくていい、とちゃんと伝えたから、話してくれたのはちゃんと心の整理がついているからだろうし。うん。
「えーと、それじゃ何とかなったんだよね? 先生かぁ、解決出来そうな人っていたかな」
「ああ、音楽の手塚先生っていたでしょ。あの人の実家、学校の近所のお寺だから」
「マジですか!?」
「っていっても、霊感バトルが勃発したわけじゃないわよ。単に心当たりがあっただけ」
何でも、彼女の通学路の白い塀がそのお寺なんだそうで。道から見えていた蔵には、檀家さんや関係者から預かったものを保管してあるのだが……中にはちょっと、いやかなりヤバいものも含まれているのだという。
「何がどうヤバいかは知らないけど、雨の日は特に気を付けてるんだって。
うっかりすると次の日、柔らかくなった蔵の周りの地面にぽっかり穴が空いて、中のものがひとつふたつ減ってるらしいから」
「……う、うわあ」
さらっと言い放ってコーヒーを飲む元委員長。対する私は何も口にする気になれない。なるほど、だから泥だらけになってたのか……
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