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「オレたちって子供の頃は限られた世界で生きてるから、上守が現れて、玉様のこと呼び捨てにして、本気で喧嘩して。あの夏はオレたちにとってセンセーショナルだったよ」
豹馬くんはあの夏のことを思い出して、笑っている。
「馬鹿玉とか誰も言えねーよ。しかも白猿の件を解決して須藤を救って、御倉神を正武家に招き入れ、惣領息子の玉様を虜にして、颯爽と消えて。そのあとはずっと放置状態だったろ。オレ、お前のことカッコいいって思った。潔くてヒーローみたいだった」
「女の子にカッコいいってどうかと思う」
私が頬を膨らませれば、豹馬くんはポケットを探って、いちごあめをこちらに放り投げる。
「そしてまた、玉様が面倒事に巻き込まれていたら、颯爽と登場。そして新たに問題を巻き起こすところが上守らしい」
むっ。これは褒められていないぞ。
「オレは稀人になった。須藤もだ。お前はどうする、上守。惚稀人のお役目を受けるのか?」
突然豹馬くんの目に射竦められ、私は困ってしまった。
玉彦にもまだしていない答えを、豹馬くんに聞かせても良いのか。
そもそもまだ答えなんて、出ていない。
一緒にいたいけど、それがいつからなのか。
まだ先は、二人の未来は決まっていない。
「もし上守が正武家になるのなら、オレと須藤は全力で玉様とお前と、その先出来る子供を護ることになる。オレは他の誰でもない、あの夏、ヒーローだった上守の為なら、須藤は白猿を退治する一族の悲願を達成させてくれた上守の為だったら、命を捨ててでも稀人の役目を全うする。そして玉様を中心とする次代の正武家の稀人仲間として、上守を歓迎するよ」
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