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「傘持って来るの忘れたから、帰れん」
「珍しいな。『メグ』が雨に打たれるなんて。……なんか嫌なことでもあったんか?」
『メグ』。
彼の声でその名前を呼ばれると、いつも胸が張り裂けそうになる。
うるさいほどのこの心臓の音は、彼にバレていないだろうか。
特に今日は、一段と騒がしい。
「傘ぐらい貸したるわ、しゃあなしな。幼馴染みのよしみで」
にやりと笑ったその顔には、以前のような幼さは微塵も残っていなかった。
日々男らしくなっていく顔つき、筋肉のつき始めた身体。
そして『メグ』と呼ぶ、声変わりを終えた低い声。
私はその全てに心を奪われていた。
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