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私は笑顔を貼り付けたまま、左手を前に出す。
勝成は満足そうに一つ頷くと私に近寄り、黒色のシンプルな折り畳み傘を鞄から出すと、私の手のひらにぽんと置いた。
「じゃ、また月曜。そん時に傘、ちゃんと返してや? 『メグ』」
勝成は左手を軽く上げると、私の傍を去っていく。
もう少しだけ一緒にいたい。
私の思いとは裏腹に、私の口からは「またね」という言葉しかこぼれなかった。
だがそれは仕方がないことなのだ。
なぜなら、『メグ』だったら、絶対に勝成を引き止めることなどしないだろうから。
彼女なら絶対に、勝成を笑顔で見送ると思うから。
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