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客席の隅々、トイレ、探せるところは全て探した。
もともとそんなに広い店内ではない。
私の子・・・・・。
今頃不安で、泣いているのではないだろうか・・・・。
先ほど、自分が戯れに話した雨女の事を思い出す。
__雨の降る日に、我が子を神隠しにあった哀れな女。
__雨の降る日に、泣いている子を見つけては大きな袋を持ってその前に現れる。
得体の知れない恐怖が、全身を襲う。
と、その時だった。
火がついたように泣き出す子供の声。
弾けるように顔をあげ、声のする方を見る。
と、そこには先ほどまで一緒にいた母親たちのさんにんの子供がいた。
ひとりが、床に誰かがこぼしたオレンジジュースに足を滑らせて転んでしまったらしい。
私は慌てて駆け寄る。
『大丈夫?
どこが痛い?
怪我はない?』
子供は一向に泣き止む様子がない。
その時・・・・・。
ふと自らが持っている物に気づく。
それは、大きな・・・・とても大きな袋。
どうして・・・、私こんなものを・・・・・・。
その時、外で稲妻が光り、その後から大きな雷の音が追いかけるようにして鳴り響いた。
子供たちは怯え、耳を塞いでいる。
あぁ・・・・・、そうだ・・・・・。
私の子。
愛しい・・・・
あの子がいなくなったのも・・・・
そう・・・・
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