12人が本棚に入れています
本棚に追加
こんな雨の日だった・・・・・。
そうだ。
全て、思い出した。
私は手に持っていた大きな袋の口を開いて、泣いている子の前に広げた。
『この中へ、お入り。
そうしたら、土砂降りの雨も、雷も・・・怖くないから・・・・
私が、守ってあげるから・・・・・・』
子供は手の甲で涙を拭いながら、私を見上げる。
私はその子に、できる限りの優しい笑みを見せた。
私の広げた袋に、泣いていた子が四つん這いになりながら、おずおずと入った。
子供が完全に入るのを確認して、私は袋の口をきゅっとしめる。
その瞬間、なんだかおかしくなってきて私はふっと息を吐くように笑った。
そう、全て思い出した。
雨女は・・・・・わたし・・・。
目の前で突然消えた友達を案じて、残ったふたりの子供が母親たちのところに駆けて行く。
子供たちの知らせを聞いた母親たちは、血相を変えて子供を探し回っている。
だけど、もう遅い。
私は子供の入った大きな袋を抱えて、慌てふためく母親たちのすぐ脇を通って店をでる。
彼女たちは私に気づかない。
それもそのはず。
あの母親たちに、最初から私は見えていなかったのだから・・・。
ふと、胸に抱えた袋の中の子を見る。
あぁ・・・・・この子も、私の坊やではなかった・・・・・。
最初のコメントを投稿しよう!