ぬいぐるみの神様

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 はぁ。やってらんねー。  俺は会社から帰ると自分の部屋で溜め息をついた。  突然だが俺は神だ。  とは言っても、天界大学、ー通称「天大」ー を今年卒業したばかりの新神だ。  天大は天界でも屈指の名門で、OBには太陽の神や美の女神など超有名神が多数存在している。  俺の両親や250歳離れた兄も天大卒であり、  もう現役を退いてはいるが、父親は山の神、母親は芸術の神だった。  兄は現役で風の神をやっている。  誰もが認めるエリート家族だ。  そんな俺もバリバリのエリートコースを歩むはずだった。  なのに。なぜ?  天界役所に入社した俺が、配属を命じられたのは「ぬいぐるみの神」だった。  人事は何を考えてるんだっちゅーの。  ぬいぐるみの神だなんて、そんなのは付喪神に任せておけばい~じゃん。  しかも昔はそれなりに「ぬいぐるみの神」の需要もあったらしいが、今じゃほとんど需要はないって聞くぞ。  俺達、神は下界からの祈りや想いに応えるのが仕事だ。  ぬいぐるみなんて、今や100円で簡単にキャッチされる時代。  そんなものが大事にされるわけない。  うん。配置変えしてもらおう。  俺は机に座るとせっせと異動願の作成を始めた。
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