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そこには燃え盛る町を、必死に手を繋いで逃げる母子の姿。
子供は5歳位だろうか。片手に、今俺が憑依している人形を持っている。
カンカンと町中にサイレンが騒がしく鳴り響いている。
上空にはいくつもの爆撃機の編隊が焼夷弾を投下している。
吹き飛ぶ人々。炎に包まれて、崩れ落ちる人もいる。
ここは人間が作り出した地獄だ。
そんな中、逃げ惑う人々にもみくちゃにされ、母子の手は引き離されてしまう。
「おかあさーん!」
「勝ーっ!!」
遠く離された子の上に無情にも焼夷弾が投下される。
泣き崩れる母。
後には焼け焦げた子と人形。
あぁ。そうか。
この人は想い出の中に生きてるんだな。
戦争で亡くしてしまった子供と会話をしているんだ。
ずっと時が止まったままなんだ。
「危ないから手を繋ごうね。勝」
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