ぬいぐるみの神様

4/6
前へ
/8ページ
次へ
 そこには燃え盛る町を、必死に手を繋いで逃げる母子の姿。  子供は5歳位だろうか。片手に、今俺が憑依している人形を持っている。  カンカンと町中にサイレンが騒がしく鳴り響いている。  上空にはいくつもの爆撃機の編隊が焼夷弾を投下している。  吹き飛ぶ人々。炎に包まれて、崩れ落ちる人もいる。  ここは人間が作り出した地獄だ。  そんな中、逃げ惑う人々にもみくちゃにされ、母子の手は引き離されてしまう。 「おかあさーん!」 「勝ーっ!!」  遠く離された子の上に無情にも焼夷弾が投下される。  泣き崩れる母。  後には焼け焦げた子と人形。  あぁ。そうか。  この人は想い出の中に生きてるんだな。  戦争で亡くしてしまった子供と会話をしているんだ。  ずっと時が止まったままなんだ。 「危ないから手を繋ごうね。勝」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加