1人が本棚に入れています
本棚に追加
俺が憑依をして、2か月が経とうとする頃。
最近病室に医者がよくやって来るようになった。
お婆さんの体調が思わしくないようだ。
俺だって一応神だ。
なんとなく、このお婆さんに死期が近づいているの位わかるさ。
「手を……繋ごうね……勝…………」
――――――――――――――――――――――――――――
そしてとうとうその日がやってきた。
「迎えに来ましたよ」
現れたのは死神だ。
「勝……どこに……いるの…………勝…………」
お婆さんはうわ言の様に繰り返している。
「手を……離して……本当にごめんね……ごめんね…………」
「じゃいきますよ」
と、鎌を持ち上げる死神。
「ちょっと待ってくれ」
俺は周りに人がいないことを確認し、
人形を操り、お婆さんの顔の横へ歩いて行った。
「な!? 何をしているんですか!重大な規則違反ですよ!」
「うるせぇっ!!!」
あまりの怒気に怯む死神。
俺はお婆さんに優しく話しかけた。
「オカアサン。ボクダヨ。ムスコノマサルダヨ」
俺は精一杯の演技をした。
声が似てるか似てないかなんて関係ない。
とにかく必死だった。
「あぁ……勝…………」
お婆さんの眼から涙が一筋流れる。
「ソウダヨ。ココニイルヨ。モウドコニモイカナイヨ」
俺は小さい人形の手でお婆さんの手をぎゅっと握りしめる。
「勝……もう……離さないからね…………」
お婆さんは安らかな笑顔で、そのまま息を引き取った。
最初のコメントを投稿しよう!