1人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は停職一ヶ月を命じられた。
死神のやつ、チクったらしい。
家に帰ると、玄関に両親と兄が立っていた。
父は一言だけ「よくやった」と言った。
母は何も言わずに抱き締めてくれた。
兄は「お前はバカだな~」と言っていたが微笑んでいた。
俺は今回の事で、少し人間に興味をもった。
神とは違い人間の命は一瞬だ。
俺達は永劫の時を生きるため、
一時の出来事や感傷に囚われたりしない。
しかし人間は違うようだ。
命に限りがある故に、お婆さんのように過去に囚われ傷つきながらも、想い出を捨てる事が出来ない。
なんと不自由な。
なんと不完全な。
だけど俺にはそれが何となく羨ましくも思えた。
俺は机の引き出しに隠してあった異動願いをびりびりに破り捨てた。
人間って面白いっ。
も~少し、ぬいぐるみの神を続けてみるかっ。
―――――――――――――――――――――――――――――
その夜、俺が眠りについた後、
こんな会話がされていた。
「人事部には無理を言って迷惑を掛けてしまったが、結果的に良かったな」
「ええ。本当に。あの子も将来きっと良い神になりますわ」
「父さんも母さんもあいつに甘いな~。まぁ俺も最初は手鏡の神だったけどさぁ」
おしまい。
最初のコメントを投稿しよう!