第1章

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 体が石になる病、石化病と呼ぶことにした病気だ。体が骨化する遺伝病はもうすでに発見されているし治療のめどは立っているが、この石化病はまだ治療法はなにも確立されていなかった。症状が軽いうちは、筋肉や靭帯が骨化して、動けなくなるだけだが、その骨化が臓器や皮膚にまで広がり、さらに、骨化した部分がより強固な石に変わる。臓器が石化して亡くなる感染者もいれば、体中が石化しても中々死ぬことが出来ない感染者もいた。  遺伝病の骨化に比べて、この石化病は早くて二日で死に至る。骨化する場所が脳や、心臓、重要な血管のどれか、そういう生きるために重要な部分が石化し、死んでしまう。  石化病の事が首都まで伝わったのは、この村のほとんどの人が感染した後だ。この村からの連絡が、最初の感染者が出てから四日も経っていた。  端末は、軍や国のお偉い人にしか利用できないため、遠距離通信は小さな村と首都では出来るはずがなかった。  そして、オレたちが着いたのはその四日後。最初の感染者が出てから、八日も経った日だ。もう何人もの死者が出ていた。進行が遅く、助かる見込みのある感染者や、辛うじて一命を取り留めている感染者を、首都の隔離病棟まで送る無菌操作のしてある輸送車に乗せたが、死者は、薪のように焼いて滅菌した。……身元が確認できた遺体は、半ば無理矢理だが家族の許可を取ってから、焼いている。  特殊医療部隊が、この村で医者としてできることはなく、生物兵器のような未知の病気を処理する科学部隊としての側面のみしか、活躍することはなかった。  石化病の感染源になる病原体が川で発見し、原因は不明だったが、石化病の病原体は川の下流に行くと勝手に死滅する。  それが分かった後、オレたちは、木造の建物が多いこの村に火を放ち、村を丸ごと焼き払った。川の水を摂取する以外の感染があるかどうか分からないため、万が一の滅菌だ。  サイドミラーに視線を向けると、奥の方に黒煙が上がっているのが見えた。積乱雲みたいだ。夏の空には、丁度いいのかもしれない。  窓を開け、暑さで蒸す空気を入れ替える。さっきまで日差しを遮っていた黒煙が無くなったので、日差しがきついが、風で少し和らいだ気がする。  首都や主要都市近辺の道以外は悪路ばかりだ。まともに道が整備されていない。軍用輸送車言えど、ガタガタ揺れる。
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