第1章

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 車酔いには強い方だが、こうも揺さぶられると気持ち悪くなる。小さな丘を上ったり下ったりする動きで、余計に負荷がかかる。  丁度ここは土が悪いのか、大きな植物はなく、オレの膝くらいの高さの雑草がまばらに生えている程度で、景色に面白味がない。エンジン音に警戒しているのか、動物の姿も見えない。  目的の村に近づいて来たところで、景色がやっと変わり始める。背の低い木ばかりだが、林と呼ぶくらいには、木々が生えていて、緑が増えてくる。道も、村の近くになったからかある程度は整っていた。 「なあ、シキヤ。石化病って何が原因だと思う?」  今まで、運転に集中して全く話さなかったアレックスが声をかけてきた。彼は車の運転が下手だから、集中するために会話やBGMすら流さないくらいなのに、珍しい。それほど、石化病について考えているのかもしれない。  ハットを雑貨屋で一緒に買ったフックにかけているので、視線を向けた時、衛生の観点で短く切っている金髪が目に入る。 「やっぱり、なんかの薬品がなにかと化学反応とかじゃない?」 「……もっと具体的な仮説はないのか」 「じゃあ、アレックスは科学やらなんやらに基づいている仮説があるの?」 「なにもない。病原体のサンプルは回収したが、細菌かウィルスかも分からないからな。見当もつかない。だから聞いたんだ。何の足しにもならない答えだったが」 「だってオレ、見習いですし」 オレは頬杖をついて拗ねたように、窓の外を見る。自然は豊かになったが、動物の姿はなかった。 「だとしてもだ。半年働いているんだから、多少は知識が身についているだろう?」 「何も学んで無いわけじゃないけど、ここの任務、異常すぎるって。ずっと感染者がゾンビみたいなうめき声上げて痙攣する病気とか、肌の色が黒くなるだけの病気とかさ。オレ、町医者になりたいのにここで働いていたら、普通の医者になれなくなりそうだ」  半年の間に起きたことを思い出していると、自分の夢から遠ざかっている気がしてならない。ここの病気に慣れてしまったら、普通の病気は診ることが出来なくなると思う。 「大丈夫。そんじょそこらの病気では驚かない精神力あたりが鍛えられてると思うがね」 「それはそれで怖いな。病気に対して、危機感を持てなくなりそうだ」
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