第1章

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道の脇にようこそ! 色あせて少しすすけた看板が立っていた。村の入り口を示すものかもしれない。ほんの数メートル進んだところで、レンガ作りの町並みが見えてきた。 軍用輸送車で村の中を走り回るのもあれなので、入り口近くの開けたスペースに駐車した。アレックスが後ろに座っているメンバーに声をかけて、ぞろぞろと降車し始める。 オレもリュックを背負い降りる。アレックスは、ハットをかぶり直してから降りた。  一応、軍の部隊ではあるが、白衣の下はそれぞれの好きなものを着ていた。オレは白衣の下は私服のTシャツに、軍指定のズボン。アレックスは、ワイシャツに黒いベスト、そして黒いズボンを履いていて、変にきっちり決めた服装だ。人によってはスーツだし、きちんと軍服だったり、野戦服だったりいろいろだった。アレックスが、手術や特殊な作業をする場合は、どうせ着替えるのだから好きを着ていればいい、と決めたからだ。軍言えど、後方支援ばかりで、まともに戦わない部隊だからこそ許される規則の緩みなのかもしれない。  戦闘員よりも研究者っぽいことをしているから、こう言うところで上にも怒られることはないようだし。  さっきの村では、マスクに手袋を装備して感染しないようにしていたが、病原体が粘膜に触れたりしない限り感染することはないと、分かったので、手袋を揃って身につけている。 「全員、この村の石化病について調べておいてくれ。俺とシキヤで、村の長と医者に聞き込みにいってくる」  アレックスの言葉に声をそろえて了解、と応えるとみんなそれぞれに散らばっていった。隊員一人ひとりの得意分野が違うので、細かい指示がなくてもやるべきことが分かっているのだ。  ちなみに、オレがアレックスに付き添うのは、友人だから、ではなく純粋に役立たずだからだ。ほかの隊員について行くより、アレックスと一緒に人からの情報を整えることくらいしか、出来ない。    村長のところへは簡単に辿りつく。最初の村人に聞いてみたら、立派な建物がそうだと教えてくれた。村の建物はレンガで建てられているが、村長の家だけ赤いレンガが所々使われていておしゃれだ。  それほど、大きい建物ではなく、玄関から入ってすぐに応接スペースがあり、オレとアレックスは村長と名乗った老人とテーブルを挟み、向かい合って座っていた。
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