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「この村は、建国された時にダムを管理するための町として作られたのです。ダムとほぼ同じ高さにある村なので、万が一ダムにトラブルがあっても、川の増水に巻き込まれることもない最適な町でした。しかし新しいダムをもっと下流に作ることになり、廃棄することに―――」
いざ、来たものの村の紹介が始まってしまう。なんでも、ダムが機能していたころは栄えていたらしく、この老人はその時代を知る唯一の人間らしい。
話を切るために、タイミングを伺っていたアレックスが、「ところで、我々は尋ねたいことがありまして!」とわざとらしく大きな声を出した。
「はいはい、なんでしょう?」
禿げ頭をポリポリ人差指で掻きながら、村長は返した。
「この村で、体が石になったり骨が飛び出すような病気が発症していませんか? 我々は、それを石化病と呼び、」
「あー、なるほど。それでしたら、ほら見てください」
そう言って、彼は左腕の袖を捲くった。手は人のものだったが、手首から先は石化していたのだ。
「私自身が、その石化する病気にかかってしまいましてね。かれこれ二カ月ほどですかね?」
さっきの村では、二日たっただけでも亡くなった人がいるのに、二ヵ月も長く生きられているのは、あの村とどんな違いがあるのだろう?
「ほかの感染者のリストがあれば、コピーをいただいてもよろしいですかね?」
アレックスの頼みを後ろに控えさせていた役員に、村長は指示を出して取りに行かせた。
その間に、オレはちょっとした疑問を村長に聞く。
「ちなみにですが、首都の方に連絡はしなかったんですか?」
「したはずですが……届いていらっしゃらないのですか?」
オレたちは、この村唯一の医者の下に向かっていた。アレックスが先ほど貰った資料を読みながら歩くので、標識や壁にぶつからないように、袖をひっぱたりして誘導する。
中心に噴水がある広場を通る。広場のあたりだけ地面にもレンガが敷き詰めて舗装されていた。少し人の気が少ない気がする。そろそろ夜になろうとしているせいか。広場を囲むように、村の商店が並んでいるが、どこもこの時間は客が少なそうだ。
「連絡が届いていない、ってことは誰に邪魔されたってことか? 今の国じゃ握りつぶすようなことはしないだろう?」
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