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アレックスに、オレが考えていたことを尋ねた。陽が落ちようとしているだけなのに、心までも暗い気持ちになる。もし、想像通りなら、これは人の欲望による事件だ。その汚れた欲望の海に溺れている最中な気がした。
「たぶんそうだろうな。この村に石化病が広まらないと困るやつがいるんだ」
リストから顔を逸らさずに、オレの質問に返事をした。リストを重要視しているのだろう。謎を解くきっかけがあると。
「なんかの科学反応や自然発生じゃなくて、誰かが作り出した生物兵器か。村長が発症してから長いってことは症状の進行を遅くする薬を、その医者が薬を売るために、かな?」
「ありえなくはないな。ただ、この村規模だと大して稼げないんじゃないか? 栄えていた当時だったらまだしもさ」
「……とりあえず、その医者に会ってみるしかないか」
「そうだな、それで怪しいかどうかぐらいは分かるだろう。……レントゲンや医療の記録も貰いたいところだが」
「犯人みたいなものだとしたら、協力はしてくれなさそうだよね」
広場より少し外れた場所に、村の病院はあった。外装は新しく、清潔感に溢れていて、病院にふさわしい。入ってみると待合室が最初にあり、玄関のすぐ側に受付がある普通の作りだった。村の規模にふさわしい小ささなので、狭いという気はしない。
少し、気を張ってオレたちは医者に会った。
しかし、彼は協力的で、レントゲンからカルテまで快く渡してくれた。
「ここは、設備が不十分で、簡単な手術ならできるですけど、難しい手術を行わないといけない患者はすぐ近くにある港町に送ることになってるんです。二ヵ月ほど前に最初の発症があってから、首都に連絡や、港町に移送しようとしたものの……」
「誰かに、止められた?」
アレックスがレントゲンから目を離さずに、言った。
「そうなんです。この村以外に広がっても困るから、首都の軍隊を待とうって村長が……」
「なるほど……。ところで、レントゲン写真のこれはなにか分かりますか?」
レントゲン写真を医者に向け、その部分を指差す。写真には、胸のほとんどが骨や石に覆われていることを示す紫煙のような白が骨をかたどっていた。その一か所、心臓に近い部分にはっきりと白の点があったのだ。
「分からないんです……少なくとも服のボタンなどではなく、体の中にあるものでした。開いて見ようにもここの設備じゃ、どうしようもないですから……」
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