0人が本棚に入れています
本棚に追加
高校1年ももう終わろうとしていた。
終業式。みんながクラス別れたくないとか、ヒソヒソ話していたり、立ったまま寝てる人もいる。長い校長の話を聞いてる人はやはり少ない。
「今年は先生誰が辞めちゃうのかなー。」
後ろから友人の彩(あや)ちゃんが突然話しかけてきた。
彩ちゃんはミーハーで若い男の先生とも仲が良い。
「私は…」
「やっくんが辞めなければいいって?」
「まぁ。うん。」
私が言う前に彩ちゃんはニヤニヤしながらそう言った。
やっくんというのは矢作 一(やはぎ はじめ)先生のことだ。
そしてやっくんこと矢作先生こそが私の好きな先生だ。
「本当に愛香(あいか)は好きだよねー。」
「いいじゃん。静かに想ってるだけなんだから。」
「誰も駄目なんて言ってないでしょ」
と、彩ちゃんが笑ったので、私もそうだねと、笑い返した。
でも、笑ってられるのも束の間だった。
「今年度でご退職、転勤なさる先生を発表します。
…先生、〇〇先生。」
次々と名前が呼ばれる。矢作先生が呼ばれないことをずっと祈ってた。でも、神様は意地悪だ。
「矢作 一先生。」
校長先生の声が聞こえた瞬間。目の前の色が消えていくような感じがした。
「嘘…。」
彩ちゃんはものすごく小さな声でつぶやいた。
先生が一人一人コメントを述べているようだが、全く私の耳には届かない。
「愛香!次やっくんが言うよ!最後なんだからちゃんと聞こう?」
最後…。彩ちゃんのその言葉に我に帰った。目の奥が熱くなる。私は涙を必死にこらえた。
「僕はまだ、入って3年ですが、転勤することになりました。皆さんと楽しい日々が過ごせて幸せでした。授業だけでなく、休み時間にみんなと笑い合えたこと、僕にとってかけがえのない思い出です。
皆さん、これからも楽しい思い出をたくさん使って、素敵な学校生活を送ってくださいね。本当にありがとうございました!」
私の頬を一筋の涙がつたった。
「愛香…。」
彩ちゃんは心配そうに私を見つめた。
「ね、あとで挨拶に行こうよ。最後だし。」
彩ちゃんは精一杯私を慰めようとしてくれてた。
「うん!」
私は手で涙を拭いた。
その日の過程が全て終わって、 彩ちゃんと私は矢作先生のところへ行った。
最初のコメントを投稿しよう!