届かぬ想いは今も胸に

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高校1年ももう終わろうとしていた。 終業式。みんながクラス別れたくないとか、ヒソヒソ話していたり、立ったまま寝てる人もいる。長い校長の話を聞いてる人はやはり少ない。 「今年は先生誰が辞めちゃうのかなー。」 後ろから友人の彩(あや)ちゃんが突然話しかけてきた。 彩ちゃんはミーハーで若い男の先生とも仲が良い。 「私は…」 「やっくんが辞めなければいいって?」 「まぁ。うん。」 私が言う前に彩ちゃんはニヤニヤしながらそう言った。 やっくんというのは矢作 一(やはぎ はじめ)先生のことだ。 そしてやっくんこと矢作先生こそが私の好きな先生だ。 「本当に愛香(あいか)は好きだよねー。」 「いいじゃん。静かに想ってるだけなんだから。」 「誰も駄目なんて言ってないでしょ」 と、彩ちゃんが笑ったので、私もそうだねと、笑い返した。 でも、笑ってられるのも束の間だった。 「今年度でご退職、転勤なさる先生を発表します。 …先生、〇〇先生。」 次々と名前が呼ばれる。矢作先生が呼ばれないことをずっと祈ってた。でも、神様は意地悪だ。 「矢作 一先生。」 校長先生の声が聞こえた瞬間。目の前の色が消えていくような感じがした。 「嘘…。」 彩ちゃんはものすごく小さな声でつぶやいた。 先生が一人一人コメントを述べているようだが、全く私の耳には届かない。 「愛香!次やっくんが言うよ!最後なんだからちゃんと聞こう?」 最後…。彩ちゃんのその言葉に我に帰った。目の奥が熱くなる。私は涙を必死にこらえた。 「僕はまだ、入って3年ですが、転勤することになりました。皆さんと楽しい日々が過ごせて幸せでした。授業だけでなく、休み時間にみんなと笑い合えたこと、僕にとってかけがえのない思い出です。 皆さん、これからも楽しい思い出をたくさん使って、素敵な学校生活を送ってくださいね。本当にありがとうございました!」 私の頬を一筋の涙がつたった。 「愛香…。」 彩ちゃんは心配そうに私を見つめた。 「ね、あとで挨拶に行こうよ。最後だし。」 彩ちゃんは精一杯私を慰めようとしてくれてた。 「うん!」 私は手で涙を拭いた。 その日の過程が全て終わって、 彩ちゃんと私は矢作先生のところへ行った。
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