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1-1「姫様の決意」
「どういうことなのよーー!?」
メイダリア王国の中心にそびえたつメイダリア城、その中では1人の少女が声を張り上げてご立腹中であった。
幼さの残る高めの声が城の玄関ホールに響き渡る。薄紫色の髪を二つに縛った容姿も更に幼さを増長してみせる。
少女の手には1枚の紙がぐちゃぐちゃにされた状態で握りしめられている。
「どうされたのですか?リル様、姫君がこのような所で大きな声をあげてはいけませんといつも・・・あら、それは」
髪を律儀に切りそろえた上品な顔立ちのメイドはなだめるように姫の背中に手を置き、姫の手に握られた手紙をそっと引き抜いた。
「どうもこうもないのよ!ラーチェ、見てよそれ!」
姫は手紙を指さしてワナワナと震えている。姫の世話係として長年務めてきたラーチェにはわかる、これはかなりの厄介事だ。心して見なければならないと。
ため息を一つして手紙を広げてみると、そこには手短にこう書いてあった。
「勇者は我々が捕らえた。無事に返して欲しくば姫の力を差し出せ。ーー魔王軍」
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