6人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
ラーチェの眉間に思わずシワが寄る。これは想像以上に面倒くさいことになった。そもそも勇者様はある手紙を受けて今回魔王城へと向かったのだ。その手紙はーー
『近々魔王軍全勢力をもって姫の力頂戴しにまいる。』
というものだった。それに先立って王国に近づく前に魔王を討とうと勇者様は国中から実力者達を集め万全なパーティを組んで旅立ったのだった。
つまり王国で最強と謳われた人物とその仲間が魔王城へと赴き、そして負けたというわけだ。
勇者様御一行が敗れたのならばこの国に魔王軍に勝てる戦力はもうない。彼らは国の持ち得る戦力何千万を超える力をお持ちであったのだから。
勇者様は姫の婚約者でもあった。王国は姫を差し出す気などさらさらないだろうから勇者の命は・・・ないに等しいだろう。姫も相当こたえているにちがいない。
「・・・姫様これは、とにかく陛下にお見せしましょう!・・・?姫様、大丈夫ですか?」
下を向いて肩を震わす姫にラーチェは優しく声をかける。
「静かに!ラーチェ、すぐ発つわよ。」
「え?姫様なん・・・」
「すぐに魔王城に出発するの!私が!」
最初のコメントを投稿しよう!