最終話 呼吸をするような殺人

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立花は俺の迷いない行動に驚き、目を見開く。 「なん……で」 理解出来ないのか立花は俺にそう問いかけると、口から血を吐き出した。 醜く歪む立花のその表情。 それすらも、今は愛おしい。 「君の願いは叶ったんだから、もう十分だろう?」 困惑する立花の耳元で優しく囁くと俺は「楽しかったよ」と付け加え、ナイフを引き抜いた。 立花はその場にうつぶせに倒れ、立ち去ろうと背を向けた時、背後から微かに笑い声がする事に気づき、足を止める。 なんだ、まだ生きているのか。 倒れた立花の元に戻ると、今度は首筋に向けてナイフを振り下ろした。 ナイフは貫通し、途端に立花は痙攣(けいれん)を引き起こす。 俺は立ち上がると、突き立てられたナイフの持ち手を足で踏み抜き、ゆっくりと捻らせた。 血と肉の間からコポコポと音を立てて空気が出入りし、血の風船が肉の中で何度も弾ける。 そして少しすると、立花は完全に動かなくなった。 赤色が後ろからついて来る中、俺はそのまま元来た道を戻る。 そして、今度は加奈の死体の前で立ち止まり、頭を両手で優しく持ち上げて、加奈の唇にキスをした。 もう、君と体を重ねる事は2度と叶わない。 だが、こんなになってもやはり加奈は綺麗だった。 「行って来ます」 そういって、頭をそっとまた両手の上に戻す。 次は、佐々木の部屋。 「……う……ぅ」 そんな声が聞こえ、足を止める。 彼もまだ生きているのか。 「佐々木、お前はやっぱり凄いよ」 最後まで我が道を歩き、他人に惑わされないお前は、俺からしても尊敬に値する。 そう思いながら、佐々木の前にしゃがんだ。 太ももが痛んだが、今はもうどうでもいい。 「何だかんだあったが、ココまで大きな事件に発展させたのは佐々木の存在があったからだよな。 ……お疲れ、もうお休み」 佐々木にそう答えると、近くのナイフを拾い佐々木の首元に当てて勢い良く横に引く。 血が飛び散り、俺たちの周囲が赤く綺麗に色づく。 ふたりめの返り血を浴びた俺はナイフをポケットに収め、ゆっくりと立ち上がり、又歩いた。 付き添う赤色は濃さを増し、来た道を戻り、車に乗り込んでも、赤色は俺から離れる事はない。 そんな中、ポケットから加奈の指の入った小瓶を取り出す。 「さて、最後の仕上げに行こうか」 そう呟き、加奈の指をポケットに入れると、そのまま車を発進させた。
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