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佐々木 荵が施設で生活を始め、1ヶ月の夜中、突如響き渡る悲鳴に職員が駆けつけると、佐々木の周囲には3人の微動だにしない子供が転がっていた。
殺害方法はシーツを使い首を絞めたり、口を押さえて呼吸困難にしたりと様々。
この事件にも佐々木は殺した理由を「そこに居たから」と答え、武器にシーツや自身の体を使った事に関しても「そこにあったから」と答えたらしい。
そして遂に精神科の個室に移動する事となったが、そこでも診察をする人や、料理を運ぶ人など、手当たり次第に引っ掻いたり噛みついたりしたそうだ。
ただ不思議な事に、個室でひとり居る時は静かで、暴れもせず、不満な顔1つしなかった。
人が近くを通ると、その人物をただ見つめ、手を出すと襲いかかる為、基本診察時は拘束具を付けられていた様だ。
だが、動けないと知ると、佐々木は全く動かなかった。
そんな佐々木は、ある日脱獄を果たし、今に至る。
「……妙だな」
この話だけを読めば、佐々木が逃亡する気があったとはどうも思えない。
病院で何かしらの心境の変化が訪れたのか、もしくは誰かの手引きがあったのか、だがコレに関してはまだ何も分かってないらしい。
そこまで読むと、突如取調室から男の汚い悲鳴が響き渡った。
咄嗟に資料を立花に押し付け、悲鳴の聞こえた取調室にに駆けつけると、11係の刑事が丁度腕を抑えながら飛び出して来た。
手には引っ掻き傷や歯型、所々に血が滲み出ている。
成る程、これは手錠を外して取り調べをした結果だろう。
「大丈夫ですか?」
俺が話かけると、その刑事は此方をぎらりと睨み、何も答えずその場を離れて行った。
それを付き添いの刑事が慌てたように追いかけ、俺に申し訳なさそうにお辞儀をする。
どうやら取り調べは中断されてしまったようだな。
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