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「何で隠すの?」
佐々木は自身の考えを信じて疑わないのか、しつこく食い下がって来たその時。
突如立花が目の前の机を強く叩いた。
鼓膜を突き刺す激しい音に、その場の空気が変わる。
「話しを逸らさないでくれるかしら」
立花の圧力的な声。
彼女は感情的になっている。
だが、当の本人は気にした様子もなく俺の方を常に向き、再度「ねえ、何で?」と問い続けた。
まるで元より立花が存在しないといわんばかりの態度だ。
「あのねぇ」
「立花、これ以上は抑えろ」
又何かを口走ろうとする立花を止め、佐々木に微笑みかける。
立花の行動はドラマで有りがちなシーンだが、現実世界ではしてはならない取り調べの一つだ。
いや、そもそも取り調べはまだ始まってすらないのかもしれない。
だが、一先ず、立花のその行動のおかげで、結果とし俺の精神は何とか安定を取り戻せた。
「すまないね、処で君はさっきから常に無表情だが、笑えたりするかい?」
「笑う必要があるの?」
「怖いと言う感情はあるかい?」
「怖い、何が?」
「人を殺した理由は?」
「だから、そこに居たから」
「君がココに連れてこられた理由は分かるかい?」
「分からないよ。それよりさ、何で隠すの?」
「……」
成る程、徐々にではあるが、佐々木の考えが見えて来たかも知れない。
彼は18歳でありながら、頭の中はリアル幼稚園児だ。
振り幅が大きく、感情にムラがあり、ADHDやピーターパンシンドロームの患者にも似ているが、それにしては冷静すぎる気がする。
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