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そもそも癇癪も起こさなければ、叫びもしない。
原因が有るとすれば、恐怖心の欠如だろうが、それだけではない気もする。
さて、そうと決まれば、物は試しだ。
立ち上がり懐に仕込んでいた銃を取り出すと、真っ直ぐと佐々木のこめかみに突きつけた。
「野神警部!」
「立花は黙ってろ」
慌てる立花を遮り、撃鉄を起こすと、カチャリと小さく鉄が擦れる音が聞こえる。
あとは引き金を引くだけで玉は出る。
だが、そんな状況下に置かれても、佐々木は先程と変わらぬ平然とした表情のまま、しかも銃ではなく俺を見つめていた。
強がりにも見えない。
「今、何をされているか理解しているか?」
「僕が殺されそうになってる」
眼球や声に震えはなく、答えも的を射ている。
状況をしっかりと理解していながら動揺しないのか。
確認が取れると、撃鉄を戻し、銃を納め、再度椅子に腰掛けた。
やはり佐々木には、恐怖という概念そのものが存在しない可能性が極めて高いだろう。
コレは、少し調べてもらう必要が有るな。
「野神警部、今のは私以上にまずいじゃないですか……
始末書じゃ済みませんよ!?」
「お前が黙っていれば済む話だろ」
そんな突き放した俺の対応に、立花は頭を抑えると、何かを決意するかの如く深く深呼吸をした。
「どうなっても知りませんからね!」
「はいはい」
俺の相方が立花で、本当良かったとつくづく思うよ。
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