第1話 真顔の連続殺人犯

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「そう、貴方とは会話が成り立ったは間違いないようね」 成り立った、いったいどういう事だ。 「あの、質問の意味が理解できないのですか」 そういうと朝霧は立ち上がり、机に置かれていた資料の一部を手渡して来た。 見ると、ソレは佐々木の報告書らしく、11係が行なった取り調べと俺達10係が行なった取調べも纏められている物だった。 「……あれ?」 11係の報告書には空白が目立ち、取り調べの内容が全く記載されていない。 そんな事があるのだろうか。 「貴方は11係がある程度取調べが済んだ後だと思ったのか、細かい質問を行なってなかったようだけど、実は彼らは今回の患者から何も聞く事が出来なかったのよ」 「確かに彼はかなりマイペースで人の話を聞きませんが、それでも自分の質問には答えてくれました。 だから、流石に空白なんて事にはならないと思うのですが……」 「彼は貴方だから答えたのではないかしら」 「私だから?」 「因みに、私の言葉にも全く無反応よ。 だから、今回野神警部をここに呼んだのよ」 成る程、佐々木の奴、俺以外には常に黙秘していたというのか。 「何故……私だけに……」 「それは現段階では全く分からないけど、このままだと私も彼の正確な分析できないわ。 実は知り合いだったりしないの?」 「残念ながら佐々木 荵との出会いは、あの現場が初めてです」 「なら彼が何故貴方にだけ興味を示すのか、暫くはこの事件にだけ専念し、直接調べて頂戴」 面倒だな。 「失礼ですが、こちらも他の事件を抱えてまして……」 「問題ないわ」 朝霧が俺の言葉に重ねるように答えると、まるでソレを見計らったように部屋がノックされた。
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