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「お前、俺以外の奴らには質問に答えてないらしいな」
早速本題に入る為、そんな質問を投げかけながら向かいの椅子に座ると、佐々木は相変わらず感情の読み取れない表情のままうなずく。
「何故だ?」
「興味がないから」
「なら、何故俺には興味があるんだ?」
「同じだから」
「……同じ?」
「同じ匂い、同じ雰囲気、僕が生きて来た中で、野神さんみたいな人は居なかった。
アレらは僕の横を通り過ぎるだけの風の様に、何の意味もない。でも野神さんは違う」
アレ、多分それは俺を除く人間を指すのだろう。
「君にとって周囲の人間が何の意味もないのならば、何故殺す必要がある」
「殺すのに理由なんてない。野神さんは何故呼吸しているか、考えた事はある?」
「生きる為だろ」
「なら、呼吸をする度に、あぁ自分は生きている何て考える? 考えないよね?」
「つまりは、呼吸と殺人はお前の中では同等であると言いたいのか?」
「野神さんは違うの?
いつも殺している時、何を考えているの?」
「……」
完全に、俺が人殺しである事を信じて疑わない質問。
全く、野生のように勘が鋭い奴だ。
だが、俺は佐々木と違い家庭がある。
ひとりではないのだ。
そう簡単に尻尾を見せるわけにはいかない。
「お前はどうしても俺を人殺しにしたいらしいが、残念ながら俺は単なる警察官だ」
そう答えるが、佐々木は今の言葉がまるで聞こえないといわんばかりに遠い目をした。
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