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「……分かりましたよ、やればいいんでしょ。
同意書、用意しておいてくださいね」
「助かるわ」
変に拒み状況をややこしくするよりはと、何とか絞り出した答えに、朝霧は満足げに微笑みその場を離れて行った。
取り残された俺は、そんな複雑な心情を抱えたまま佐々木の待つ部屋に戻る。
これまで積み上げた自身の印象、そして警察として、取るべき最善の手。
もう、こうなればやり切るしかないか。
「お待たせ」
「何をしてたの?」
佐々木は俺が戻って来るなり、食い気味に聞いて来たが、相変わらず表情自体の変化はない。
「この部屋に存在する記録媒体を全て止めてもらうようにお願いしたんだよ」
「何で?」
「俺はお前と違い、家族があり、世間体なんかのしがらみがあるんだ」
そう答えた後、わざとどっかりと腰を下ろし、脚を組むと、佐々木は驚いたのか、微かに目を見開いた。
「何故、俺が殺しをしていると分かった」
そう質問を口にした途端、自身の胸が締め付けられる感覚に襲われる。
まるで自白をしている様で、気分が悪い。
だが、それは間違いだ。
アレはそこらへんの奴がする様なただの殺人ではない。
必要な剪定なんだ。
そう心にいい聞かせ、少し俯いていた目を佐々木の方へと向けると、そこには不気味な笑顔があり、ゾクリと鳥肌が立った。
何を笑っている、いや、そもそも佐々木は笑えたのか。
ちがう、そんな事よりココからは人殺し同士の腹の探り合いの始まりになる。
これからの駆け引き、気を引き締めなければ、飲み込まれる。
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