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突然の張り詰めた空気に、緊張が更に高まる。
俺が人殺しであると感じた部分。
こびりついた血の匂いなど、どうとでも誤魔化しはきく、だからこそ佐々木が感じた俺と一般人の違いが知りたい。
「……何となくかな」
だが、返ってきた答えはあまりにも曖昧な一言だった。
「何となく?」
「野神さんも僕を見た時に感じなかった?
懐かしいとか、落ち着くとか、似てるとか」
「つまりはフィーリングの問題だと?」
「そう、それ」
「一緒にするな」
似ている、確かに初めて佐々木を目撃した時、そんな感情が生まれた。
だが、知れば知るほど俺と佐々木は相反する存在である事が理解できた今、似てる部分を見つけ出す方が難しい。
「もしかして、野神さんには殺す理由があるの?」
「当たり前だろ」
「そうなんだ。
良いなぁ、僕はそんな事考えられないからさ、気づいたらいつも殺しているんだ……何でかな?」
「……」
佐々木は今の今まで殺害理由に、“そこに居たから”と答えていたが、多分そこに偽りはないのだろう。
佐々木には、殺す時の恐怖もなければ、快楽もない。
狂気じみた快楽を楽しむサイコパスともちがう、別の存在、それが佐々木だ。
それは、驚くほど俺と真逆の思考回路の持ち主である事の証明にもなる。
「お前、警察に捕まったり、精神科に入れられたりしたんだろう?
人前で殺したり暴れたら、自分は捕まるという危機感は生まれなかったのか?」
「何で?」
「だから、殺すならもっと人目のない場所で殺すだろ。
他人に見られたら、捕まって自由も奪われて、暫く殺しが出来ないだろ?」
そう質問すると、佐々木は少し考えた後、漸く意味が理解できたのか、「あぁ」と呟いた。
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