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キャリア組は、叩き上げの連中に嫌われやすいとは聞いていたが、ここまで子供じみていると、正直何も感じなくなる。
だが確かに、自分よりも若い人間の下になるのは面白くないだろう。
「おいおい、お前ら僻みはいかんぞ。
野神君も何か言ったらどうだね」
陰口に気づき間に入って来たのは、織田課長。
前頭部に髪がない、気さくな60代だ。
織田課長の言葉には嫌味がなく、部下からの信頼も厚いが、こういう奴は、多分これ以上 上れない。
織田課長はあまりにも優しすぎる。
「言う事は有りませんよ、俺は好きですよ、こう言う事をハッキリ言ってくれる人」
半年後には、俺もこの課にある殺人犯捜査10係の係長になる。
つまりそんな小物は相手にするだけ時間の無駄であるという事だ。
「ひゅー、流石野神さんは器が違いますねー」
俺のそっけない反応に他がわざとはやし立て、先程まで文句を垂れていた者が舌打ちをすると、漸くこの場は落ち着きを取り戻した。
やはり今日は平和だ。
そう思い、自分の仕事机に座り、これまで受け持っていた案件の資料整理を始めた時。
突如織田課長のテーブルの上ある電話が、けたたましく鳴り響いた。
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