雨がはこぶ君

2/3
前へ
/3ページ
次へ
雨の日は好きだ。毎日が雨でもいいと思っている。 いや、訂正。たまに会えるから胸が高まるのかもしれない。 ただ毎日会えると緊張してしまうからか。 結局は、毎日願っている。雨が降っていると君に会えるのだから。 耳元でポロローンポロローンと不思議な音が鳴り響く。 目覚まし用にセットしておいたスマートフォンの音だ。 いつも思うのだがスマートフォンのアラーム音というのは、なぜこうもへんてこな音なのだろうか。 覚醒しきっていない頭がどうでもいい思考に使われていた。 しかしその頭は窓の外の光景をみた瞬間に覚醒した。 「雨だ」 思わず、独り言葉を漏らしてしまう。 僕は毎日、この雨を楽しみにしているのだ。 東京は今週から梅雨入りとのことで、気分は最高だった。 気分は最高なのだが雨に見とれている場合ではない。 朝というのは少し油断していると時間がすごいスピードで進んで行く。 いつも通り、制服に着替え軽く朝食をとる。 このあと朝練といえども朝はなかなか食欲がわかなくて、多くは食べられない。 しかも今日は雨だ。 喉を通るはずがない。 雨の日にだけ会える彼女に期待を膨らませ、僕は家を出た。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加