第2章 死を呼ぶ地底湖

2/7
前へ
/85ページ
次へ
チコは、両親を知らない。 いや、正確には知るほどに触れ合っていない。 だから、親と呼べるのは世話を焼いてくれた祖父だけだった。 だから、その逝く間際に手渡された地図は、彼女にとって真の意味で形見と言える。少なくとも祖父から託された意思を、自分の手で何らかの形、として手に入れたい、というのはその後のチコにとって自然な感情だった。 (……じいちゃん、わたし必ず……) 地図を握りしめる。 この地図の導くところに何があるのか、祖父が遺してくれた物の正体をチコは知りたい。 それ故に先刻は思わず取り乱して、彼らには悪いことをしてしまった。 しかし、祖父の『遺産』が狙われていると思った瞬間、目の前の地図をどうにかしなければと咄嗟に取った行動だ。 内心、すごい自己嫌悪。祖父の遺産を確保できたら彼らにも謝意を示さねばなるまい。 『……と、此処かぁ』 image=510681620.jpg
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加