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チコは、両親を知らない。
いや、正確には知るほどに触れ合っていない。
だから、親と呼べるのは世話を焼いてくれた祖父だけだった。
だから、その逝く間際に手渡された地図は、彼女にとって真の意味で形見と言える。少なくとも祖父から託された意思を、自分の手で何らかの形、として手に入れたい、というのはその後のチコにとって自然な感情だった。
(……じいちゃん、わたし必ず……)
地図を握りしめる。
この地図の導くところに何があるのか、祖父が遺してくれた物の正体をチコは知りたい。
それ故に先刻は思わず取り乱して、彼らには悪いことをしてしまった。
しかし、祖父の『遺産』が狙われていると思った瞬間、目の前の地図をどうにかしなければと咄嗟に取った行動だ。
内心、すごい自己嫌悪。祖父の遺産を確保できたら彼らにも謝意を示さねばなるまい。
『……と、此処かぁ』
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