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『ごめん、ごめん、ほめん、ほめん、ごめん、ごめん、ほぅめ、ほぅめん、ごめんってばらひ』
謝るクェンの肩に乗り、その口を『ぐにぃぃっ、ぐにぃぃっ』と怒気満面に引っ張るラギ。
よほど先程の扱いが不当だったと見える。怒りの矛先が逸れて、胸をなで下ろしたアスナは目の前に現れた巨大な石の門をいち早く見つけた。
『ほぇぇぇ~、でっかい扉だねー』
『ふぉんとだ。へはいな、はんだほりゃ?』
カンテラで照らすと扉の紋様が眼前に広がる。ラギはクェンの口を引っ張るのを止め、その古代の紋様とその周囲に目を凝らした。
寝袋の中からはボッコの寝息が聞こえる。
『……クェン』
『ん?どうしたラギ』
『ここって……オデュッセイアの遺産の地図ってことで来たんだよね?』
『ああ、あの地図を売りつけてきたおっさんはそう言ってたぞ。由緒正しき地図だ、とか何とか言って』
『────この中にあるの、ううん。多分あるモノ。『遺産』とは全っっ然っ、関係ないモノよ?』
『はぁぁっ!?』
クェンとアスナの声がハモる。
二人は『信じられない』『そんなバカな』という視線で小さな竜属を見据える。しかし、その神妙かつ怪訝な表情を見て、それが冗談ではないことが伺えた。
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