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かつての魔竜は人差し指を立てる。
『思い出してきた────多分、この遺跡自体は今から250年ほど前の王朝の名残、クジイ王朝だったかな。…………ここの鳥の王紋に見覚えがあるわ。』
ラギが指差す先には大きく翼を広げた鳥が描かれている。
────霊鳥『イシュタンブル』というらしい。
『……そして此処に祀られているのは贄の祭龍『マー・ルー』、高位のヤツじゃない。人語すら解さないタダの食欲だけの水龍よ』
『え?この扉の向こうに水龍がいるっての?』
『うん。朽ちてなきゃ、だけど。』
がっくりと明らかにアスナのテンションが下がる。
『マジ勘弁してよ~、ワケのわかんない地図でここまで散々歩いて瓦礫の下敷きになって、凍死させられかけて、挙げ句の水龍とかどーすんのよ?
ねえ、クェンさん?』
『うむ、聞こえない。』
『全部お前のせーだよ』
ぐりぐりぐりっ
『ぎゃあああぁぁぁああっ』と、アスナの拳にこめかみをグリグリやられながら、門近くのブロックの一つにレバーを見つけたクェンはそれを引いてみる。
すると巨大な扉は容易く開いた。まるで食事を待つ凶獣の口腔の如く。
『なるほどな。仕掛けは生きてるか』
『……ってことはチコはもう入っちゃったってコトよね。追う?もちろん追うよね』
『そだなー、ラギの話がホントなら放っちゃおけんなー』
『クェン、言っとくけど贄の祭龍をまともに相手しちゃダメだかんね。』
ラギは口を引っ張るのをやめた手で、今度はクェンの耳を引っ張る。
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