第3章 眠り屋の咎

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キィィィィィィ……ン……! アスナは自らの両手・両足の宝珠に流れるような意識を集中させる。 一見、古びたブレスレットとアンクレット。 それはアスナが口の中で古代語(にほんご)にて『起動』を命じた瞬間、四肢の宝珠に眩く躍動するかの如く紋様が浮かび上がった。 溌剌とした紅い瞳に、躍動の想いが、若さと共に光り上がる。 ギィィィィンッ!! 『肉()むる風神の蟲、轟け英風! 風の咎(エアクライム)発動ぉぉぉっっ!』 刹那────暗闇の地底湖に光の柱が降臨する。 アスナの身体が、ぶわっと宙空に舞い上がった。大気が、異様な動きをしているのが肌に感じ取れる。凄まじいまでの神気。 それを見たラギが額に血筋をピキっと浮かんだ。 鼻息が超荒い。 『だーーーっ! だからこの小娘っっ!? 狐女っっ!アンタ、あたしの言いたかったことまったく伝わって無いじゃないっ! だから『遺産(それ)』を使うな、って言ってんのよーーーっっ』 クェンの肩に乗るラギから野次が飛ぶ。 突然、耳元で叫ばれたクェンはビビって鼻水が飛び散る。 『あっはっは!ラギっち、今はキンキュージタイよ。だいじょーぶ大丈夫、加減はちゃんとするする♪ だって、ほら!『人命さいゆーせん』なんっしょ?』 悪びれた様子はなく、 ただただ────無邪気。 『じゃね♪』 キィィィィ…………ン ドシュゥッッッン! 遥か遠ざかる竜属に告げる声は風の豪音にかき消される。 『…………~~~っっっもぅ、信じらんないぃぃぃ。あんの馬鹿女、未完成遺産(インコンプ)とは言え、暴走すればこんな遺跡なんて一撃で吹っ飛ぶ。 それ────『遺産』なんだからねっっ!』 『……ラギ、……お前が叫んでるの、俺の耳元なんだからね?』 もはや聴力を丸ごと持ってかれたクェンは、使い物にならない片耳を押さえ鼻水を啜りながら地底湖の足場作りに勤しんだ。
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