第3章 眠り屋の咎

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────ひと口に『オデュッセイアの遺産』と言っても、その形態は様々である。 中でも、完全な状態である形で発見される遺産は『完全遺産(フルコンプ)』、そして《何かしら》の不具合によって完全でない遺産は『不完全遺産(インコンプ)』との名前で区別して呼ばれる。 そして『オデュッセイアの遺産』として正式に認められるのは、この『完全遺産(フルコンプ)』のみである。 発見されている『完全遺産(フルコンプ)』は二十七個。もし、新たな『二十八個目』が発見された時、その発見者は莫大な富と名誉を得ることが約束される。 ────故に、遺産を求める者たちはこれを光届かぬ深海に、前人未到の広大な森林に、遥か滅びた太古の遺跡に求めるのだ。 対して、アスナの『風の咎(エアクライム)』は後者『不完全遺産(インコンプ)』である。 最悪ーーー暴走すれば、こんな古びた遺跡など一瞬で崩壊させる『力』を持っていたとして何ら不思議ではない。過去には『未完全遺産(インコンプ)』を(いたずら)に扱ったせいでとある国の領土が一夜にして焦土と化した事件の例も、ある。 かつて大陸を救う為に、神雄によって齎された『オデュッセイアの遺産』 それは、────ともすれば『最悪の厄災(カタストロフ)』ともなり得る諸刃の刃なのである。
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